パワークエリとパワーピボットの違い

モダンExcelでは、パワークエリやパワーピボットを使ってデータモデルに対し、集計や分析を行います。パワークエリとパワーピボットをどう使うか、機能として似たような部分もあり、迷われる方も多いようです。また、どちらを先に学ぶのが良いかと尋ねられることもあります。

Excelパワークエリとは

モダンExcelで扱うパワークエリは、Excelブック内に「クエリ」を作成するツールです。ではクエリとはなんでしょうか?

クエリは「指定されたデータを取りに行く」ことを指しています。データベースやプログラムの世界では基本的な考え方になりますが、表計算ソフトとしてExcelを使っていると、なかなかイメージが湧きにくいものです。

具体的には、開いているExcelのワークシート上に、別の場所にあるデータの塊から必要なデータだけを取り出して表(テーブル)を作成する機能となります。

Excelパワーピボットとは

パワーピボットは、ピボットテーブルの強化版です。これまでのピボットテーブルでは、元データになる表(テーブル)は1つにまとまっている必要がありましたが、パワーピポットでは複数の表(テーブル)を使ってデータモデルを作成し、ピポットテーブルでより高度な集計・分析を行えるようになります。

Excelパワーピボットについてはこちらで詳細をお伝えしています。

モダンExcelの中で、パワークエリ・パワーピボットそれぞれの役割は?

モダンExcelでは、まずパワークエリで必要なデータを取得し、データモデルの中で活用しやすい形に整えます。その後パワーピボットでデータモデルを作成し、集計や分析を行うこととなります。元データにはクエリで接続しているため、データ更新の際にはワンクリックで最新情報を集計結果に読み込むことができます。

データの取得と整形はパワークエリ、データモデルの構築と集計・分析はパワーピボット、と役割分担します。

どちらを使えばよいか迷うポイントは?

ただ、実際に運用しようとすると、どちらを使えばよいか迷うポイントも出てきます。

パワークエリでどこまでデータを絞り込むのが良いか、また複数のテーブルをそのままパワーピボットに渡した方が良いのか、それとも一つのテーブルにまとめた方が良いか、などです。パワークエリでもグループ化機能を使えば簡単な集計などもできるため、そこも迷われる方が多いようです。

具体的な例として、販売数量のみを持つ「売上データ」テーブルと、商品価格を持つ「商品マスタ」テーブルがある場合を考えてみましょう。

  • パターン1 クエリを結合して一つの表にしたあと、計算列を追加して「販売数量×商品価格=販売価格」のフィールドを作成するところまでパワークエリで行う。
  • パターン2 パワークエリでは各テーブルを取得するだけとしし、パワーピボットでリレーションシップを設定してSUMX関数で販売価格を求める。

上記の場合、基本的にはパターン2を使うのがスマートです。実務では運用に合わせて最適な手段を見つけることが必要となるためパターン1を完全に否定するものではありませんが、原則は「できるだけシンプルな運用を目指す」ことです。データモデルのサイズを小さく抑えることにもつながり、動作速度やメンテナンス性も向上します。

パワークエリ利用の目的は必要なデータを取得し、きれいなテーブルを作ることです。その際、できるだけデータのボリュームが少なくなることを意識します。もちろん、集計・分析時に必要なデータは残します。何を「必要なデータ」と判断するかは運用状況次第です。フィールドはもちろん、レコードも絞り込みができますが、絞りすぎては分析の自由度が下がります。ユーザーのスキルが問われるポイントです。

パワーピボット利用の目的は、パワークエリから渡されたテーブルを元にデータモデルを構築して、それを集計・分析することです。パワークエリで適切なデータがシンプルに取得できていれば、パワーピボットでの集計は比較的容易に行えるはずです。唯一、日付テーブルはパワーピボットで作成してデータモデルに組み込んだ方が、日が進んだ時の対応などがしやすいでしょう。

まとめ

パワークエリ、パワーピボットそれぞれの利用目的を明確にすれば、それぞれの違いも分かりやすくなります。

学習順はどちらが先でも良いのですが、パワーピボットの活用にはパワークエリの利用が前提となること、パワーピボットを利用しないユーザーにも便利な機能が含まれることから、パワークエリを先に学んだ方がスムーズかもしれません。ただし実務では、パワーピボットで何ができるかを理解していることで、パワークエリの使い方が変わってきます。まず基本的なスキルをパワークエリ→パワーピボットの順で身に着けてから、必要に応じてそれぞれのスキルを随時学んでいくのが効率が良いのではないでしょうか。